第37章 願い
「狡噛、あまり馴れ馴れしく管財課職員に話しかけるな。」
「どうした、ギノ?俺は、次に新しい訓練用ドローンが入ってくると聞いて、それがどんなものか是非話を聞きたいと思ってだな……。」
「あー!!まさかギノさん、妬いてンの~!?ギノさんって実は、悠里ちゃんみたいなコがタイプとか……!?」
秀星くん、楽しみ始めたな……。
「ば、馬鹿を言うな縢!俺は、潜在犯風情が、一般市民に話しかけることによって生じるサイコハザードを危惧しているんだ!貴様もだぞ、縢。わ、分かったらとっ……とっととオフィスに戻り、報告書を作成しておけ。」
一方のギノさんは、真面目に応対している。そこは、流していいと思いますよ、宜野座監視官……。
「ギノ、噛んでるぞ。」
狡噛さんも、余裕でツッコミ入れてるし……。
「え~!?人生には休憩も必要っスよ!?」
「お前は休憩が圧倒的大部分だろう、全く……。」
相変わらず、秀星くんと一係の掛け合いは面白い。いや、秀星くんも一係なんだけど。きっと、秀星くんにとって、一係はかけがえのないない場所なんだろう。私にとっても、こうして仕事を続けていくうちに、ここが通いなれたもうひとつの職場のようになってきた。いつか秀星くんや狡噛さんが言っていたように、宜野座監視官も、口ではああ言いながらも根はいい人だ。こうして通う中で、少しずつだけど、秀星くん以外の一係のメンバーとも話ができるようになってきた。新田さんは、3人のやり取りを、呆気に取られながら見ている。
「え~っと、盛り上がっているところ失礼します。今日は、次に入荷される格闘訓練用ドローンと、新しい事務用品についてお話です。」
「事務用品については、既に管財課から新しいカタログを受け取っている。前年度から特に大きな変更は必要ない。それでは、その他訓練施設については、二係の青柳監視官に任せてあるので、そちらを訪ねてほしい。俺はこの後会議が入っているので、これで失礼する。」
そう言い残して、宜野座監視官はトレーニングルームを出て行ってしまった。