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シャングリラ  【サイコパスR18】

第37章 願い


***

「失礼します、宜野座監視官。トレーニングルームへの入室を許可いただきたいのですが、よろしいでしょうか?」
「あ、悠里ちゃん!仕事?俺も行く~!」
 秀星くんは、私を見るやいなや、嬉しそうに手を振って椅子から立ち上がった。何だろう。小動物みたい。
「縢、今は勤務中だ。黙れ。あぁ、管財課の月島君か。ご苦労。話は聞いている。私も同行しよう。」
「あれ?見ない顔だね~?」
 秀星くんは、宜野座監視官を軽くスルーした。さらに、私の後ろにいる新田さんを見つけて、反応していた。意外と目ざといな……。
「はじめまして。新しく入庁いたしました、新田と申します。以後、お見知りおきください、宜野座監視官。」
 新田さんは、秀星くんの存在を意に介すどころか視界に収めることもなく、宜野座監視官に向けてゆるやかに微笑み、慣れた様子で自己紹介を終えた。宜野座監視官も宜野座監視官で、特に彼女の存在を意に介すこともなく、トレーニングルームへと足を進めた。

 宜野座監視官の後ろに私、その後ろに新田さん、秀星くんがぞろぞろとトレーニングルームへ移動する。振り返ってみれば、若干秀星くんが嬉しそうだ……。まぁ、女の子は好きみたいだから、仕方ないのかな……。でも、正直微妙だな……。でも、公安局刑事課にいる限り、出逢いなんてほとんどないわけだし……。でも、仮にも私の事「好き」って言っておいて、新田さんを見つけて嬉しそうにしてるっていうのも、私としてはちょっと面白くない……かな……、いやいや、いまは勤務中。仕事に集中しないと。

「……ふっ!――――っ!」
 トレーニングルームでは、相変わらず狡噛さんが訓練用ドローンを相手に、格闘訓練をしていた。
 狡噛さんは、目にもとまらぬ動きでドローンの連続攻撃を難なく躱(かわ)していく。
「――――死ねッ!!」
 連続攻撃を躱した直後に素早く体勢を立て直し、手刀を一撃、訓練用ドローンの頸部に叩き込んだ。
『ピー』
 電子音が鳴り、訓練終了。
「あぁ、月島か。待ってたぜ。ギノからこの時間だって聞いてたからな。」
 狡噛さんは、流れる汗をタオルで拭(ぬぐ)い、ペットボトルの水を飲みながら、こちらに近づいてきた。
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