第37章 願い
「先輩、何考えてるんですか?顔、怖いですよ?」
「え?あ……、そう?ゴメン、新田さん。」
4月になったことで、管財課にも何人かの新卒の子が入ってきた。その1人が新田さん。どういう家の子なのかも聞いていないから詳しくは知らない。けれど、ここは公安局―――――中央省庁だ。こんなところにまともに就職できるのは、『執行官』などの特殊な事情を除いてしまえば、トップクラスの超エリートだけだ。適性判定ではさぞかし華々しい結果が表示されたことだろう。新田さんはいつも有名ブランドのホロスーツを上品に着こなしていて、それに全くイヤミが無い。ふわりとゆるい曲線を描く髪は、彼女の動きに合わせてフェミニンに動く。
「先輩?14時からは、刑事課一係に行かれるんですよね?私も、ついていくようにって言われてるんです。ご一緒してもいいですか?」
「え?あ、うん、大丈夫!一緒に行こうね!」
とてもしっかりした、いい子。それが、私が彼女に抱いた第一印象。私は、引き続き山田さんと組んで、去年度と同じ仕事をさせてもらえることになった。どんな形であれ、秀星くんと接点を持ち続けていられるのは、素直に嬉しい。いや、仕事に私情を挟むのは良くないことだ、っていうことぐらいは、分かっているけど。