第35章 『猟犬』 Ⅴ
「んじゃあ、ドローンをすり替えたのも?」
「手塚よ。手塚とその仲間が、公安局の巡査ドローンを破壊して、代わりにあのハリボテを走らせていたみたい。特に、アンタと狡噛がいたエリアのドローンが集中的にやられてたわ。」
「やっぱり、そっか。でも、公安局の巡査ドローンと誤認させられるように位置情報を送信させる装置なんて、どうやって作ったんだ?アイツにそこまでの技能があるとは思えねェよ。」
「共犯のうちの1人が、知り合いを何人も介して入手したらしいわ。今、2係が全力で辿ってるけど、調べが付くかどうか、正直微妙なところ。」
「あとさ、ネイルガンなんて、奴らどうやって手に入れたんだ?」
この『社会』で、他人に危害を加える武器を製作するなんていうのは難しいことだ。そんなことをすれば、犯罪係数上昇間違いなしだ。そもそも、工事なんてものは、今やほとんど機械(オートメーション)化されているのだ。専門業者であれば入手可能なのかもしれないが、普通はネイルガンそのものの入手すら、そもそも困難ではないだろうか。
「あー、それな。7人の共犯全員、手塚に渡されたとしか答えなかった。」
とっつぁんは、右手で後頭部をボリボリと掻きながら答えた。
「んじゃ、手塚は?」
「それが、何度尋ねても、ある日突然、差出人不明で送られてきたとしか答えなかった。詳しく話を聞いても、得られた情報はそれだけだ。手塚も、差出人に心当たりが無いらしい。念のため、ネイルガンを取り扱う事業所や店を当たってみたが、どれもハズレだ。不審なところは無かった。」
「差出人不明、ねぇ。そんなの、怪しさ満点じゃん。どこの宅配業者つかったのさ?」
「それが、手塚の話では、箱に伝票すら貼り付けられていなかったらしいの。」
「そんじゃあ、もう調べようもないじゃん……。」
「手塚自身にも、思い当たる人間がいないらしい。こりゃあ、お手上げだな。」
「ふ~ん……。」