第35章 『猟犬』 Ⅴ
俺とコウちゃんは、医療設備の搭載された護送車に乗せられて、そのまま公安局へ送り返されたのだった。
車内で、最低限の応急手当が施されていくのを、俺は低い天井をぼんやりと見ながら感じていた。最後に負傷した、左目眼球にほど近い場所にも、ガーゼが当てられた。そう言えば、もう数センチずれていれば、眼球にモロ命中していたことになる。まぁ、とっつぁんの腕のこともあるし、今の時代なら自分の身体の一部をサイボーグ化したところで、生活が不自由になることは無い。寧ろ、この『仕事』なら、暗視や光量調整などのサブ機能を搭載できたりして、生身よりも何かと便利になることの方が多そうだ。それはそれで、使い勝手が向上して良いかもしれない。
公安局の処置室に着いたらすぐに、麻酔を打たれた。睡眠薬も入っていたのか、麻酔の副作用なのか、ただ単に俺が疲労していただけなのか。理由は分からないが、一気に眠気が襲ってきた。まぁ、医療処置を受けるのに、俺が起きている必要もない。特に眠気に抗うこともなく、瞳を閉じた。