第32章 『猟犬』 Ⅱ
たった300メートルを進むだけの道中、再びドローンの残骸を目にした。同じように無残なほどに破壊されており、辺りには釘が散らばっていた。先程のドローンと同じ手口で破壊されたのだろう。それにしては妙だ。
「ねぇ、コウちゃん……。ドローンが破壊されたのは分かったけどさ、ドローンが破壊されたなら、ここ港区で稼働してるドローンの総数は確実に減るわけだよね?でも、分析室は、ドローンの位置情報を受信し続けてる……。これってヘンだよね?」
「あぁ。そこにも何かあるんだろうな。この事件。どのみち、ドローンは役に立たないんだ。俺たちだけで調べるしかない。志恩、言うことを聞かない役立たずのドローンは、今どこだ?」
『東南東の方角に、あと270メートル。速度は人間並みだけど、さらに北に進んでるから、このままだと見失うかも。急いだほうがいいかも。』
「急ぐぞ、縢!」
「うん!」
コウちゃんの後ろを追うようにして、倉庫の立ち並ぶ道を駆ける。もちろん、周囲に最大の警戒を払いながら。鼻は、鉄が錆びたような匂いと、微かに潮のにおいを捉えていた。もう、周囲に数少なくあるだけの街灯以外に、光は無い。
『その辺りよ。ドローンの反応をキャッチしてる。』
「……、何もない、……?」
俺は、キョロキョロと周囲を見回すが、特に何も見つけられない。というより、本当にこの辺りにドローンの反応があるのかと疑いたくなるほどに、何もない。
―――――カチ……
「!」
今、微かだったが、確かに聞こえた。―――――小石か何か、小さいものが転がるか、弾かれたような音だ。コウちゃんも何かに気付いたらしく、音のした方向を睨んでいる。同時に、コウちゃんも俺も、ドミネーターを起動させる。
『位置情報、正確にキャッチしたわ。慎也くんの真南、30メートル前方に、反応よ!』
「……、よし。」
コウちゃんは、センセーの通信を聞いた直後、ドミネーターをホルスターに格納した。
「え?コウちゃん……?」
「ぉおらぁ!」
「ちょっ!?」