第31章 『猟犬』 Ⅰ
ディスプレイが、地図からネイルガンに切り替わった。あのネイルガン――――――!
『慎也くんも、シュウくんも覚えてるわね?』
「あぁ。」
「当たり前じゃん!」
俺を撃ったネイルガンだ。解析が終わった後、センセーに見せてもらったネイルガン、そのものだ。
『本日午後5時46分に、中央区で市民1人がネイルガンで足を撃たれたの。まぁ、街頭スキャナに凶器までは映ってなかったから、絶対にこの凶器と全く同じだという確証はないわ。ただ、この前シュウくんが撃たれたときの釘と、現場に落ちてた釘が一致したから、同じものである可能性は高いわね。昨日も、新千代田区で、市民1人が撃たれる事件があったし……。幸い、被害者両名ともは軽傷で済んだわ。でも……』
「でも?」
『昨日だってすぐに二係が現場に駆け付けて追跡したけど、中央区から港区に入る辺りで逃しちゃったのよ。でも、逃げ込んだ場所は新橋の辺りで間違いないことが判明。解析も終わったし、二係が再度現場捜査に乗り出そうとしていたところに、新たな被害者が出た……ってワケ。』
「ホシは、まだ新橋にいるのか?そこからさらに逃亡している可能性は?」
コウちゃんが、ディスプレイを見つめながら問う。
『まぁ、全く無いとは言い切れないわね。でも一応、新橋に逃げ込んだって情報が入ってすぐに、付近はドローンで封鎖してる。交通規制だって敷いてるわ。念のため戸籍データや住民データにある写真から顔が割れたから一斉に手配したけど、新橋から外へ出たって記録は無し。ついでに、コイツが過去に整形したっていう記録も無いわ。ま、記録に残る合法的な範囲では……だけど。廃棄区画は、街頭スキャナの絶対数そのものが少ないからドローンを送り込んでるけど、該当人物は一切引っかからない。地下はほとんど水没してるから、長時間そこに逃げ込んで潜伏……っていうのも考えにくいわね。』
「となると……廃棄区画内のどこかに潜伏……か。骨が折れるな、これは。」
『北側は、既に二係が粗方調べてるけど、今のところ、特に手掛かりがないみたい。』
「広範囲だ。だから、一係も投入されたってことだな。」