第29章 残響
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仕事が終わってすぐに、秀星くんにメールしてみる。
『今日もお疲れさま。まさか、医務室で会うとは思わなかったよ。
この後、秀星くんは予定あるかな?
実はまた、私の上司からお菓子をもらいました!
今回はほんのちょっとだけど、分けようと思って。
時間があったら、返信くれると嬉しいです。』
今日も、山田さんは私と一緒に仕事ができなかった。山田さんはそれを申し訳ないと思ってくれているようで、時々お菓子をくれる。それも、天然モノの、多分高価なもの。山田さんもお付き合いで誰かから貰うらしいけど、詳しいことは知らない。今回は、小瓶に入った金平糖というお菓子らしい。私も、名前ぐらいは知っていたけど、実物を手に取るのは初めてだった。前のチョコレートのときも喜んでくれたから、今回も喜んでくれるといいな。……別に、それをダシに使うわけじゃないけど、自然な形で、秀星くんから話がきければいい。
返信は、数十分と経たないうちにに来た。
『お菓子くれんの?楽しみ~!
今日は俺も、これで上がりだから、またウチでメシでも食ってく?
んじゃ、いつでも来てよ!待ってるから!』
たったこれだけのやり取りなのに、私はもう、自然と頬が緩んでいた。そう言えば、最近はお互いあまり時間が合わなくて、会えない時間が続いてたな、なんて思う。……私は秀星くんの恋人でもないのに。