第29章 残響
「は~い、いらっしゃ~い。」
白衣をセクシーに着こなす先生。今日も美人で素敵。その横では、上半身裸の秀星くんが、ベッドに腰掛けていた。
「ぶっ!?ちょ、あ……!?」
「ね~?シュウくんもそんなに体大きくないのに、いいカラダしてるわよね~!」
先生は、秀星くんの背中をべちんと叩いて、カラカラと笑っている。
「あいてっ!?」
「あ、そ、その……、医務室に、何か……?」
こんな明るい場所で、秀星くんの体を見たことは無い。だからなのか、恥ずかしさが込み上げてくる。確認する術もないが、多分私は混乱丸出しの顔をしているに違いない。
「何って、シュウくんが脱いでたから、悠里ちゃんにも見せてあげようと思って。もう、わたしは用が済んだから、そのベッド好きに使っていいわよ。」
「え……」「センセー!?」
さすがの秀星くんも、先生のビックリ発言に狼狽(うろた)えている。
「大丈夫よ。カメラは切ってあげるから、白昼堂々安心して情事に耽(ふけ)りなさい。事後処理はドローンにやらせるから、心配無用。アフターサービスも完璧よ。」
「な、せんせい……、なに言って……?」
「シュウくんも照れちゃって、カワイイとこあるじゃない!フフフ……」
秀星くんは、照れているというよりは、引いている。それも、ドン引きのレベルで。
「んじゃ、あとはお楽しみね。邪魔者は退散するわ……」
先生は、指を口に当てて、妖しく微笑んだかと思うと、分析室へと消えていった。
「あ、その……、私、仕事で……。」
「いや、俺もだし……。」
何だろう。妙な沈黙が流れる。原因は、間違いなく先生にあるけど。
秀星くんは、服を着ながら、私と会話している。決してガタイがいいとは言えないけど、引き締まった体。腕だって、細くはあるけど、しなやかに筋肉がついている。するりと袖を通される、黒いシャツ。秀星くんに似合うなぁ、なんて、頭の隅でぼんやりと考えていた。……って、これじゃあ私、変態みたいじゃない!何か、ちょっと話題を変えないと!そう言えば、どうして秀星くんが医務室にいるんだろう?秀星くんも、仕事って言ってたけど、医務室で何の仕事なんだろう?
「ねぇ、なんでまた、医務室に秀星くんが……」