第29章 残響
さぁ、今日という今日は、分析室の備品のチェック、私がしっかりやらないと!いつも、先生が全部やってくれてるけど、いつまでも甘えてちゃいけない。今日も、山田さんは小難しい会議に参加しないといけなくて、私一人でのお仕事。それに、今日は分析室に新型のモニターを導入するのだ。だから、取り付け工事に立ち会うという、大切な仕事だってある。運搬・工事用のドローンだって、2機連れてきたし、万全の態勢。とは言っても、工事は全部ドローンが10分ちょいでやってくれるらしいから、私はその仕事を眺めてるだけなんだけど。
時間、早く着きすぎちゃったな。でも、遅いよりは絶対に良い。モニターだって、早く取り付けた方が、先生の仕事も捗るに違いないんだから、いいかな。
「失礼します。唐之杜先生、いますか?」
分析室の扉をくぐる。
「あれ?」
いつもは、私が少しぐらい早く来たところで、マルチディスプレイ前の椅子に、必ず先生が座ってるのにな。もしかして、日を間違えた?いや、そういうわけでもなさそう。ドローンに設定された日付を確認しても、今日で間違いない。
どうしたんだろう、そう思っていると、先生の声。
『悠里ちゃん、いらっしゃい。ごめんね、今医務室にいるの。もうちょっとかかるから……、あ!ねぇねぇ、医務室に来れる?場所分かるわよね?』
『ちょ、センセー!?』
「!?」
秀星くんの声?あぁ、そうか。医務室と分析室は、音声でのやり取りができる設備があったんだっけ。でも、なんで秀星くんが?まぁ、言われた通り、医務室へ行こう。