第28章 『執行官』 Ⅱ
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「怪我自体は、全く大したことないわ。もう、処置も済んだし。」
センセーはそう言って、医務室のベッドに横たわる俺に話しかる。処置は、実にあっさりと、短時間で終わった。ここには最新鋭のオペシステムも完備されており、この程度の怪我なら、数時間と経たないうちに処置が済んでしまう。大抵の怪我なら、ビックリするほどに早く、跡形もなく治る。現に、釘3発を貰った俺の怪我も、数日後には完治するらしい。一応、今は包帯やガーゼを当てているが、念のための処置というだけで、明日からの勤務にも全く差し支えないらしい。一晩寝れば、痛みも全くなくなるという。
「脇腹で良かったわね。もし、これが目とか頭とかに命中していれば、こんなに軽く済んでないわよ。」
センセーは、安堵したような声で言った。
「それに……」
センセーの声のトーンが、僅かに落ちた。
「それに?」
「釘と……、シュウくんを撃った、あの銃みたいなやつ。あれの解析結果が出たの。聞きたい?」
「うん。」
「まず、銃ね。アレは、ネイルガンっていう電気式の工具。コンクリートとかに釘を打つ機械ね。それを改造して、武器にしてたみたい。それと、シュウくんの身体に刺さった釘。あれも、ご丁寧にも特別製だったわ。」
「特別製?」
「ええ。釘の中心から先端にかけて、空洞部分があったのよ。恐らく、何か……例えばクスリとかを仕込むための仕掛けでしょうね。」
「っ!?」
「安心しなさい。今回は何も検出されなかったわ。」
どうやら、俺は運が良かったようだ。
センセーに礼を言って、自分の部屋へ帰る。処方された痛み止めの効果か、既に痛みはほとんど引いていた。