第28章 『執行官』 Ⅱ
デバイスのモードを切り替えて、音を立てずにギノさんと通信する。
『残りの対象4名を発見。1人は刃渡り15センチほどのナイフを所持。残りの3人は被害者と思われる女性に暴行中。女性は恐らく人質で、まだ意識ありますけど、もうヤバそうっスよ。どうします?』
『征陸もいるな?』
『うん。』『ああ。』
『確保、できるな?』
『りょーかい。』『まぁ、任せておけ。』
とっつぁんは、相変わらずの落ち着いた態度。俺も、いつだって出られる。
『よし、犯人確保だ。絶対にしくじるなよ。』
『『了解。』』
とっつぁんと目で合図をしながら、突撃のタイミングを計らう。
「行くぞ、縢。」
とっつぁんの声に合わせて、まずは見張りのナイフ持ちに、柱の陰からドミネーターの照準を合わせる。同時に、指向性音声が頭の中に響く。
『犯罪係数・オーバー100・執行対象です』
ナイフ持ちの男の犯罪係数は、当然のように100を超えていた。網膜表示によれば、189。
『執行モード・ノンリーサル・パラライザー・慎重に照準を定め・対象を無力化してください』
引き金を引き絞ると同時に放たれる、神経麻痺ビーム。実にあっさりと男に命中し、男は膝から崩れて、ナイフは床に転がった。さて、本番はここからだ。
「な、誰だ!?」
女に群がっていた男の1人が、女から離れたと同時に、とっつぁんが放ったパラライザーが、そいつに命中して、あとは同じ。そいつもその場に倒れ伏した。残るはあと2人。この状況の中で、見るからに狼狽している。