第25章 クリスマス・イヴの憂鬱
「エロい話?」
言い淀んでいると、秀星くんから一撃がやってきた。これ以上は無いというほどのクリティカルヒット。
「ち、ちが……!」
自分の顔に血が上っていく感覚が、実に生々しい。これじゃあ、肯定しているのと変わらない。
「ぶっは~!悠里ちゃんって、分かり易い!で?誰に何吹き込まれたの?」
「ぅえ!?」
「……、あのさ。その反応じゃ、もう大体答え言ってるようなモンだよ?悠里ちゃんは、絶ッ対、浮気できないね!」
秀星くんは、心底面白がっている。笑いをぶり返したらしく、またケラケラと笑いだしたし。こっちは、次は何言われるか分かったもんじゃないから、気が気じゃないのに。だからせめて、お返ししてやることにした。
「いい。浮気なんて出来なくていい!私には、秀星くんだけだから!」
わたしは、勢いよく席から立ち上がった。食事中に席を離れるのはマナー違反だけど、多少の違反ぐらいしないと、秀星くんには太刀打ちできない。そのまま、腰掛ける秀星くんのところまで行って、髪の毛を思いっきりくしゃくしゃと撫でた。突然のことに、反応が遅れたらしい秀星くんは、私が頭を撫で始めて数秒経ってから、やっと私の両腕を掴んだ。
「ちょ、……コラ!もう、髪ぐちゃぐちゃになったじゃん!」
私は、両腕を秀星くんに捕まえられたままで、軽く睨まれた。でも、秀星くんが座ってて、私が立ってるから、秀星くんが私を見上げる位置関係。あんまり怖くない。おまけに、秀星くんの髪は、本人の申告通りぐちゃぐちゃ。ヘアピンの位置もズレている。
「あはは~!秀星くんかわいい~!」
私は、わざとらしく秀星くんを見下げて笑ってやった。そうやって、人の失敗に漬け込むから、こんなメに遭うんだ。