第25章 クリスマス・イヴの憂鬱
「……、ぷぷ……。悠里ちゃん……。っく……、悠里ちゃんって、さ……」
秀星くんが、笑いを堪えている。もういいです。笑ってください。
「う、うん……。」
「隠し事できないよね~!」
秀星くんは、何の遠慮もなくケラケラと笑っている。
「……、はい。」
それでも、いい。脳内で変なこと考えてたってバレるよりは、よっぽどいい。このまま秀星くんに笑い過ごされるのを待とう。幸い、秀星くんの笑いはすぐに収まったらしく、私よりも先に、ケーキを口に入れ始めた。
「んじゃあさ、何が無理なの?」
……、完全に迂闊(うかつ)だった。
「え、っと……。そ、それは……!」
そこまで回答を準備してなかった。まさか、先生に変なこと吹き込まれましたなんて、口が裂けても言えない。
「あ、それは……、その……!だから……!」
まずい。完全にしどろもどろ。これじゃあ怪しんでください、邪推してくださいって言っているようなものだ。恐る恐る秀星くんを見ると、案の定というべきか、その瞳は悪戯な色に染まっていた。
「へー……。俺さ~、ちょっとは悠里ちゃんに信頼してもらえてるかな~って思ってたのにな~?」
ちょこちょことケーキをつまみながら、ニヤニヤと言葉を紡ぎ出した秀星くん。タチが悪いよ!
「し、秀星くんのコトは信頼してる、よ……!」
それは間違いない。でも……。
「んじゃ、さっきのハナシ。何が無理なの?」
「そ、それは……!」
「それは?」
秀星くんの悪戯な瞳が爛々と輝いている。どうやら、見逃してはくれないらしい。でも、正直に答えることなんて、できないし……。
時間だけが無暗に過ぎていく。ほんの数秒が、数分ぐらいの長さに感じる。本気で焦る。
「えっと、それ、それは……」