第25章 クリスマス・イヴの憂鬱
「へへ、当たり。悠里ちゃんが前に持ってきてくれた天然モノのチョコ使ってんの。全体に甘さは控えめだから、食事の後でも食べやすいと思うよ。」
あぁ、やっぱり、これだったんだ。今回は、秀星くんが口に出してくれたからわかったけど、料理の組み合わせとか、順番とか、そういう微妙なものを、私に合わせて考えてくれてるんだ。だから、秀星くんの「料理」は、優しい味で美味しいんだ。
「秀星くん、優しいね。」
気が付けば、私の口は勝手にそんなことを零していた。
「も~いいから!食お!」
秀星くんは、一瞬私を見たけど、すぐに目を逸らした。秀星くんはいつも通りの表情を浮かべたままだったけど、どことなく照れているような、そんな気がした。
食事中、数日前に先生に言われたことをふと思い出した。
『絶対喜ぶわよ!何なら、アッチの方面も、悠里ちゃんから誘ってあげれば、シュウくんとびつくわよ!』
……それって、本当なのかな。
『誘い方が分からない?それなら、まずは適当に酒でも飲んで酔ったふりでもして、あついから脱がせてとか何とか言えばいいのよ。そしたら体温が下がるから、ベッドで温めてって可愛く誘えばOK。ベッドまで行ったらあとは勢いに任せてズボンを脱……』
「そんなの無理!」
気が付いたら、秀星くんの前だってことも忘れて、叫んでいた。おまけに、机も軽く叩いてしまっていた。さて、気付いた時には、時既に遅し。
「……ビ、ビックリした……。どったの?アレ?悠里ちゃんってミント嫌いだっけ?」
流石に、突然目の前で私が叫んだことには驚いていた。秀星くんがきょとんとした顔でこっちを見ている。当たり前だよね……。あ、でも、ここで黙ってしまったら余計に変。何か返事しないと!
「え、ううん!そんなこと無い!ミントの葉っぱとか大好物!」
……、うん。我ながら、変な返しだと思う。明らかにスベりました。ミント味のガムやクッキーならともかくとして、お菓子にトッピングされているようなミントの葉っぱが大好物な人って、世の中に何人いるんだろう……。もう私、明らかに挙動不審だよ……。