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シャングリラ  【サイコパスR18】

第25章 クリスマス・イヴの憂鬱


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 今日はもう少し準備に時間が掛かるということで、先にシャワールームへ行くことになった。せっかく着替えてから来たけど、仕方ない。髪を乾かして、軽くメイクを整えて、再びワンピースに袖を通した。ふと、先生に言われたことが頭をよぎった。

 いつも悪いなぁと思いながらも、今日もバッチリ夕食をご馳走になってしまった。悪いと思う以上に、というかわたしのそんな気持ちの数百倍以上、秀星くんの「料理」は美味しい。以前は、オートサーバーが出す料理と比べて味に深みがあるな、とか複雑で繊細な味わいだなとか、そんな感動でいっぱいだったけど、最近は、何だかそれだけじゃないような気がして仕方ない。何というか、こう、味が柔らかい。「優しい味」と言い換えてもいいけれど、それじゃあ表現として抽象的過ぎるような気もする。それに、どんどん秀星くんの「料理」が私に馴染んできているような気がする。秀星くんによれば、手作りの「料理」はオートサーバーと違って、味付けで微妙な調整ができるらしい。もしかしたら秀星くん、私が食べやすいように、色々と味付けなんかも調整してくれてるのかな。それはそれで非常に申し訳ないけど、もしそれが本当なら、嬉しいかも。

「ごちそうさまでした。今日も美味しかったよ。なんか、こう……、上手く言えないけど、秀星くんの「料理」は、優しい味で、好き。」
 稚拙な言葉。私はこんな表現しかできないのだろうかと、やや悲しくもあるけど、秀星くんならこんな幼稚な言葉の間から、何かしら読み取ってくれると信じて、言葉を紡ぐ。
「……な~んか、今日はいつもより素直じゃん。ナニ?クリスマス効果?ま、そんなカワイイ悠里ちゃんには、デザートあげましょうかね!」
 秀星くんは立ち上がって、カウンターからトレーを持ってきた。そこに乗っていたのは、可愛らしいケーキが2つ。
「……ケーキ?」
 小さなスポンジに、生クリームが塗られていて、上にはミントの葉とチョコレートがトッピングされていた。
「あ……、もしかして……?」
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