第3章 涙
「最初は僕も一緒に行くけれど、会議や出張なんかが入った時には、月島さんひとりで刑事課に行ってもらわなきゃならないこともあるかもしれないんだけど、大丈夫かな?」
山田さんは、優しく問いかけてくれた。
「はい、最初は戸惑ってご迷惑をおかけしてしまうかもしれませんが、精一杯やってみますので、これからもよろしくお願いします。」
うん、何となくだけど、大丈夫な気がする。それに、ちょっと不謹慎かもしれないけど、もしかしたらかがりさんにまた会えるかもしれないと思うと、どことなくソワソワした。
山田さんは、管財課のほかの職員たちに、この仕事を山田さんと私ですることになったことを報告していた。早速、今日にでも刑事課のフロアに行かなければならないらしい。
山田さんは、先程とは打って変わって上機嫌だった。もうすっかり、いつもの山田さんだった。最初に刑事課二係、続いて三係のフロア、分析室へ行き、出勤中の監視官・執行官、分析官に挨拶をした。トレーニングルームなどの各種設備も案内してもらった。一係だけは、監視官・執行官が出動中とのことで、オフィス内を軽く見せてもらっただけで終わった。分析官がやや気怠そうに喫煙していた以外、特に気になる要素はなかった。いや、かがりさんに会えなかったのは、ちょっと残念だったかもしれないけど。いや、折角の仕事に、あまり私情を挟んでは、いけない。
「特に要請が無ければ、次に刑事課に行くのは来週だよ。今日挨拶できなかった一係には、僕が明日の朝一にでも、挨拶に行くよ。出張に行く前に寄れば、一係の監視官の退勤前に間に合うはずだから。朝も早いし、月島さんは来なくていいよ。僕が話をしておく。」
やっぱり山田さんは素敵な上司さんだなと思った。