第24章 ゲーム・パニック Ⅲ
「あー……、悠里ちゃん、その……、さ、うん。このゲーム、したの?」
したに決まっている。一番上のセーブデータをロードして、このシーンまで進んでいるのだから、少しの時間だけプレイした……ということはあり得ない。いくら適当にシーンを飛ばしたとしても、未読スキップ機能にロックを掛けているので、このシーンに辿りつくには、それなりの時間がかかるのだ。悠里ちゃんの性格だから、文章もある程度読んだだろうが。ちなみに、俺が普通にテキストを読んでいっても、これぐらいの時間かもう少し短い時間でこのシーンに辿りつくだろうから、計算上では悠里ちゃんが普通にテキストを読みながらプレイした可能性が最も高くなる。それでも、お互いに逃げ道を用意するためにも、「していない」と答えられる質問を投げてみた。もし、悠里ちゃんが「していない」と答えれば、とりあえずこの話はこれで終えることができる。あとは俺が適当なことを言えば、この場は収められる。
「え、えっと……。」
明らかに言い淀んでいる悠里ちゃん。俯いて、モジモジしている。計算上ではプレイしたに違いないが、年頃の女の子が「エロゲーをプレイしました」なんて、ハッキリ言えるハズが無い。それも、仮にも多少なりとも好意を抱いている異性の前だ。潜在犯の俺ですら、悠里ちゃんの目の前で「エロゲーをプレイしています!」なんて元気よく宣言することは憚(はばか)られる。……まぁ、俺がエロゲーをプレイしていることは、見事なまでに悠里ちゃんに知れてしまったが。
「う、うん、しちゃった……。最初は、分からなくて……。どんな話かな……とか、その……。」
「そっか~……。」
悠里ちゃん、自分がエロゲーをプレイしたこと認めるんだ……、ふーん……。俺が逆の立場なら確実にしらばっくれるか、悪ノリして相手の反応を楽しむ。……が、悠里ちゃんは違った。