第24章 ゲーム・パニック Ⅲ
そういえば、ゲームは楽しんでくれただろうか。いくら評価が高かったといっても、流石に格闘ゲームを渡したのは良くなかっただろうか。でもあのゲームは、ライトユーザーからヘビーユーザーまで、ほぼ満遍なく評価の高い格ゲーなのだ。SEや有名声優の熱演だけが、あのゲームの魅力じゃない。ライトユーザーには、各キャラのシナリオが確かな世界観をもって描かれていること、初心者でも感覚的に操作が可能であることが高く評価されている。ヘビーユーザーには、全体的なゲームバランス、コンボの繋がりや操作性の高さが評価されている。さらにマニアには、一部操作キャラの使用する技が、実際の格闘技を忠実に再現していることが、とりわけ高く評価されているのだ。あのコウちゃんが目を見張るほどに、キックボクシングやプンチャック・シラットを始めとする格闘技の動きが、忠実に再現されているのだ。普段はクールを気取ってるコウちゃんも、アレには熱くなった様子で、ゲームをしながらも体が不自然に動いていた。コンボに組み込まれた一連の動きの流れを見て、すぐにでも身体を動かしたくなったのだろう。そう言えば、液晶ディスプレイを凝視しながらも、意識はどこか遠くの標的に狙いを定めている……そんな気はしたけれど。
「でも、だからって、翌日俺をトレーニングルームに呼び出してフルボッコって……、大人気(おとなげ)ねェよ、コウちゃん。」
思わず、独りごとが小さく口から漏れていた。別に、誰に聞かれても困る類のものでもないから、一向に構わないが。でも今は、それよりも悠里ちゃんだ。