第23章 ゲーム・パニック Ⅱ
「ホントにベッドまで来ちゃったじゃん……。ここにコウちゃんの忘れモンなんて、絶対ねェよ。」
睡眠を邪魔されて、やや不機嫌な秀星くんが、苛立ちを乗せた声で言い放つ。まだ秀星くんの体温が生々しく残っているベッド。そこから匂い立つ優しい香りを裏切るかのように、狡噛さんはとうとう、獣の本性を露(あらわ)にしてしまう。
「もうさぁ……、明日でいいじゃん、コウちゃ……ぅ、ああっ!?」
最初こそ苛立った声だったが、途中からは咄嗟のことに叫んでしまった秀星くん。それもそのはず。狡噛さんは、秀星くんをベッドへ勢いよく押し倒したのだから。秀星くんと狡噛さんの体格差を考えても、秀星くんは全く抵抗できない。されるがまま、組み敷かれてしまう秀星くん。
「ちょ……!ホント何なの、コウちゃん!明らかにヘンだって!何考えてんの!?」
すぐには答えない狡噛さん。秀星くんはさらに続ける。
「寝惚けてんの!?ここは執行官宿舎、俺の部屋!俺、男!溜まってんなら……」
「分かってんじゃねぇか。」
至極落ち着いた、狡噛さんの声。しかし、暗闇の中で、狡噛さんの口角は、吊り上がっていた。
「は?」
呆気にとられる秀星くん。狡噛さんは、その隙に秀星くんの下半身に手を伸ばし、手早くズボンを取り払った。
「ちょ、何してんのよ!?」
咄嗟に、下着だけは死守した秀星くん。もう、眠気なんて、遥か遠くにブッ飛んでしまっている。
「イイ反応じゃねぇか。」
「酔ってる……ってワケでもなさそうだし……。これ以上やったら、いくらコウちゃんでも、本気で怒るからね!」
キッと狡噛さんを睨み付ける秀星くん。でも、それはむしろ、狡噛さんの加虐心を焚(た)き付ける結果にしかならないことに、秀星くんは全く気が付かない。