第23章 ゲーム・パニック Ⅱ
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~月島悠里妄想劇場、ここに開幕!~
「こういうゲームを2人でヤんのも、悪くないね、コウちゃん。」
狡噛さんに甘えるようにして、上目遣いを送る秀星くん。悪戯な瞳は、たとえクールな狡噛さんのハートだろうと、どこかしら揺さぶるだけの魔力がある。私だって、そんな瞳で秀星くんに見つめられてみたい。
「何言ってんだ、縢。ゲームなんて、所詮はバーチャルだろ。俺は興味ねェよ。」
わざと冷たく、突き放すような言葉でしか返事をしない狡噛さん。でも、秀星くんの瞳の魔力で、クールなハートのほんのわずかな隙間に、種火が落とされるのだ。―――――そう。その種火は、会えないときほど、強烈にその心を焦がす、厄介な代物(シロモノ)。
「ちぇ。コウちゃんは相変わらずだね~。まぁいいや。またいつでも来てよ。コウちゃん。」
魅了の魔力にも似た、自らの魅力に気が付かないというのは、秀星くんの罪なところ。いまだって、微かに唇を尖らせ、狡噛さんの視線を振り切るようにしてふいと横を向く。秀星くんの自然な仕草なのに、隙を見せるような仕草にも見える。それは、意図せずして狡噛さんを煽ってしまう。微かに尖らせた唇だって、その先は僅かに桜色に色づいており、開花する直前の桜の蕾(つぼみ)を彷彿(ほうふつ)とさせる。いくらクールな狡噛さんでも、無意識にもその蕾を愛(め)でたいと思ってしまうに違いない。
秀星くんの部屋を出て、自室へ帰る狡噛さん。しかし、無自覚のままではあるが秀星くんの魅力に、密かに悶(もだ)えることになるのだ。