第22章 ゲーム・パニック Ⅰ
画面が、黒一色から一枚絵に切り替わった。しかし、四肢を空中で拘束されたリリアが、何故か衣服を所々破られた……極めて不可解な状態で縛られていた。何コレ。
リリアは、ツタのような蔓(つる)状のもので縛られていて、躰……というか、衣服が破れて剥き出しになっている胸に、手の平大ぐらいのスライムが張り付いていた。というか、なんかこう……、リリアって顔は幼いのに無駄に胸大きい……。
『リリア!』
カオルくんが叫ぶけど、リリアは相変わらず空中に縛られている。そして、胸に張り付いたスライムが、厭らしく蠢いて、躰を這った。リリアは魔法使いに見えて、さっきも桃色パワーを使ったクセに、この状況は抜け出せないぐらいに非力なんだろうか。それよか、このゲームはもう間違いなくアダルトなゲームだ。秀星くんと狡噛さんは、こんなゲームを二人で……?
『カオルくん……っ』
私がそんなことを考えている間にも、画面の中のリリアは、どんどんあられもない姿になっていく。そうこうしているうちにも、ストーリーは進んでいく。やがて、どう表現していいか分からない、多分人間サイズであろうグロテスクな怪物が現れて、カオルくんに向かって偉そうに口上を述べ始めた。
『貴様が最近調子に乗っているらしい、知将気取りの青二才か?くだらん。この魔獣石の放つ妖気の前には、貴様など取るに足らぬわ!そんな細腕で、このワシを倒そうなどと、自惚れるなよ。』
怪物の口上は、この後も延々続いた。流石に私も、適当に読み飛ばした。
『喋っている暇は無いハズだよ。』
カオルくんは長い口上を聞き終えてから一言呟くと同時に、飛び道具を怪物の足元に投げ、その隙に渾身の一撃を喰らわせていた。怪物は、口上の長さと反比例するかのような短い時間で、カオルくんにあっさりと倒された。流石カオルくん。カオルくんって、どんな姿なんだろう。推測するに、華奢で知的な好青年なのかな。――――――まぁ、秀星くんの方が頭の回転が速いけど。