第19章 バースデー・サービス 前編
「……脱がすよ。」
ぽつり、呟いた秀星くんの声は、掠れていた。
「……、ぁ……。」
切羽詰まった表情だった割には、秀星くんは私の衣服を、ひとつひとつ丁寧に脱がせてくれている。秀星くんの指が、直接私に触れることは無いけれど、それでも気持ちいい。ブラジャーとキャミソールインナーと、下はパンツ1枚になったところで、秀星くんは、はたと手を止めた。
「ね、俺のは悠里ちゃんが脱がしてよ。」
「……ん!?」
「俺が悠里ちゃんのを脱がしたワケだし、俺のは悠里ちゃんが脱がしてよ。」
「え……。」
まさかの申し出。
「サービス、してくれんでしょ?」
そう言って、秀星くんは眉を下げて、懇願するようにして私を見た。やめて、そんな目で見られたら、私、何でもできてしまう。秀星くん、ズルすぎるよ。
「うん……。」
私は、恐る恐るといった感じで、秀星くんの上着の襟元に手をかけた。
「悠里ちゃん、ボタン……」
「へ!?あ……。」
私、何してるんだろう……。どう見たって、上着にはボタンが付いてるのに……。
「ぷ、ははは!」
秀星くんに笑われた……。しかも、ムード台無し。私の馬鹿。
「何ナニ?そんなに緊張してんの?そういや悠里ちゃん、コウちゃんの上半身見ただけで赤くなってたもんね!」
「ちょっ!」
突然何を言い出すの!っていうか普通、こういう時に他の男性の名前は出さないんじゃないんだろうか……。いや、狡噛さんはいい人だと思うけど……。
「悠里ちゃん、かっわいー……。」
秀星くんは、下着姿の私に抱き付いてきた。ついでに髪も撫でられて、何だか気持ちいい。それにしても、完全に秀星くんのペースだな……。でも、それでいい。それがいい。