第19章 バースデー・サービス 前編
「舌、入れてよ。」
「……!?」
し、舌……?前に、秀星くんが入れてきたやつ!?そんなの無理!恥ずかしくて気絶する!
「何、赤くなってンの?そんなに恥ずかしい?」
ニヤニヤと、からかうように言葉を紡ぐ秀星くんが、ちょっぴり憎らしく見えた。分かってるくせに……。
でも、秀星くんがそれで気持ちよくなってくれるなら、頑張ってみてもいいかな。
「……。じゃあ、目、瞑って。」
「ん……。」
ご丁寧に、唇は軽く開いたまま、目を閉じてくれた。
そっと、秀星くんの両頬を、私の両手で包む。緊張のせいで、指先に妙に力が入る。さっきと同じように、私の唇を秀星くんの唇に触れさせる。……、あれ?今、秀星くん、笑ったような――――――、――――――!!?
「ン――――、ンン―――――――――!!?」
一瞬、何が起こったのかが分からなかった。私の舌が、思いっきり秀星くんのそれに触れていること以外は。
「――――――、ぁ、ン―――――!?」
―――――ちゅく、ぴちゃ。
官能的な音が響く。私の舌は絡めとられて、秀星くんの舌と絡んでいる。時々、秀星くんに吸われるように愛撫される。はじめは、恥ずかしくてどうしようもなかったのに、何回かされただけで、気持ちよさにおかしくなりそうになる。頭の中で、快感が暴れまわるような感覚。でも、そんな感覚も、ほんの少し物足りなくなってきて、欲しくなってくる。躰が熱い。また、あの熱に侵されそう。そんなことが頭の中によぎる頃には、秀星くんの唇は離れていた。
「……、悠里ちゃん―――――何?足りないみたいな顔して。」
秀星くんが、顔を近づけたままで話しかけてきた。敏感になっている唇に、秀星くんの吐息が当たって、燻(くすぶ)っている熱が、燃え広がりそうになる。秀星くんの言う通りだ。足りない、秀星くんにもっと触れてほしい。秀星くんに与えられる熱が足りない。それに、できることなら、私の熱も、秀星くんに感じてもらいたい。身に纏(まと)うこの服が邪魔にさえ思えてくる。もう、私はおかしいかもしれない。止まらない。止まれない。
「秀星、くん……、うん。……、足りない、かも。足りない。……、どう、したらいい、の?」
「――――――――ッ……」
秀星くんは、刹那下を向いた。その数秒後に顔を上げた秀星くんの表情は、なんでだろう、切羽詰まっていた。