第19章 バースデー・サービス 前編
「んじゃ、仕切り直しで。悠里ちゃんヨロシク。」
秀星くんの軽やかな声に誘われるようにして、もう一度秀星くんの上着に触れる。今度は、ちゃんとボタンに手を伸ばした。指先が微妙に震えて、うまく外れない。もたつく。何となく秀星くんの顔を覗き込むと、笑いを堪えていた。
「しゅ、秀星くん……!」
「……、だって、悠里ちゃんが……プッ……!」
秀星くんってば、心底面白がってる様子。
私は何とか秀星くんの上着を脱がせることができた。あとは、上着の下に着ていた長袖ニットと、ズボン。道のりは遠そうだ。とりあえず、長袖ニットから……って、どうしたらいいの、これ。
私の動きが止まったのを見て、秀星くんはさらに嬉しそう。
「どったのよ、悠里ちゃん?」
ぐぅ……。分かってるくせに……!
「これ、どうやって……?」
「ぷ、くく……、いーよ。上は俺が脱ぐから、ベルト外して?」
「え……?」
ベルトって、ズボンのベルトだよね?ってことは、やっぱり、その、そういうことになるの……、かな?うん、嫌じゃない、嫌な訳もないけど、やっぱり怖い。でも、秀星くんは好き、大好き。
「ん?あー……。」
秀星くんに私の迷いが伝わったのか、秀星くんは私と目を合わせてくれた。
「悠里ちゃんが怖いなら、シないから。安心して。」
そして、優しい目をしてくれて、そっと髪を撫でてくれた。その優しさに、思わず目を閉じた。
「う、ん……。」
しばらく、秀星くんの体温と私の熱と、静けさが空間を支配していた。でも、その静けさは、秀星くんが破った。
「んじゃ、悠里ちゃん。続き、しよ?」
「!」
耳元で、それもとびっきり色気を孕んだ声で、静けさは破られた。
そんな声で誘われたら、私、止まらなくなるよ。
震える指をベルトに伸ばす。金具に触れる。秀星くんが、笑った、ような気がした。