第18章 誕生日
「志恩、いるか?」
突然、分析室の扉が開く音がして、もう聞き慣れつつある声がした。狡噛さんが、分析室に入ってきた。
「はいは~い、あ~、慎也くん。例の連続窃盗事件ね~。とりあえず、現場付近にあった遺留品の解析は終了してるわ。今、データ映すわね。」
先生は、慣れた手つきで、PCと周辺機器を操作し始めた。
「頼む。助かるぜ。」
狡噛さんは、ちらりとこちらを見たが、私の存在を意に介する様子もなく、モニターを見つめた。これ以上私がここにいると、仕事の邪魔になってしまう。
「えっと……、先生、今日は、ありがとうございました。参考にして、頑張ります。これからもよろしくお願いします。」
先生は、少しだけ私の方を見てくれて、「またいつでも来なさいね」と声を掛けてくれた。
出入り口へ向かう途中、狡噛さんとすれ違う。
「狡噛さん、えっと……、いろいろ、ありがとうございます。ではまた、お世話になります。」
それだけ言って、私は急いで分析室を出た。