第18章 誕生日
「あ、そうだ。」
先生は、何かを思い出したように、PCを操作し始めた。中央のモニターに、秀星くんの顔写真と、幾らかのデータが表示された。IDに名前、所属、年齢、経歴、血液型―――――?
「あー、やっぱりー!」
――――――?何が、やっぱりなのか。
「ホラ、シュウくん、今年まだ誕生日来てなかったのねー!12月3日。もうすぐじゃない?」
先生が指差す方を見れば、生年月日の欄に、2090.12.03の表記。
「本当ですね。知りませんでした……。」
今日が11月27日だから――――6日後。
「今が20歳だから、次で21歳になるのね。まだまだ可愛いわね~。フフッ。」
先生は、秀星くんのデータ表示を消しながら、上機嫌に微笑んだ
「誕生日……。」
秀星くんは『更生施設』にいた。『施設』では、誕生日を祝ったりしていたのだろうか。去年はどうだったのだろうか。職場で祝ったりしたのだろうか。
「ね、折角だし、祝ってあげたら?」
何をすればいいのだろう。プレゼント……も、あの部屋を見る限り、自分で自分の欲しいものを買い揃えています、という感じだったし、そもそも私のお給料では、そんなに値の張るものは買えない。
「でも……、私、秀星くんが喜びそうなもの、わからないです……。先生、何か心当たり有りませんか?」
天然モノの食材、という案は浮かんだけど、それって、暗に秀星くんに「料理」してくれって催促するみたいで、気が引ける。だからといって、小物なんかも、秀星くんなりのこだわりがありそうで、私のセンスでは気に入らないかもしれない。プレゼントって、案外難しい。適当な贈り物でも気を遣うのに、誕生日プレゼントともなれば、尚更のこと。
「え~?そんなの、悠里ちゃんがエロい下着でも脱ぎながら誘ってあげれば、シュウくんとびつくわよ?あ、でも付けたままってのも……」
「ちょっ!?」
「冗談よ。」
………。先生の冗談は、どこまで本気なのか分からないから、怖い。今も、目は本気だった。
「それなら、本人に聞いてみれば?……どういう下着が好みか。」
「えぇっ!?」
「いちいち、可愛い反応ね~?」
先生が、妖しく微笑んだ。
「え、えっと……。」
でも、本人に訊いてみる、っていうのは、案外良い方法かもしれない。