第18章 誕生日
「じ、じゃあ、唐之杜先生―――――、先生、でいいですか?」
「別に、私が貴女を診ることはないけど?まぁ、いいわ。シュウくんもそう呼んでるし。ちょっとぐらい、私のこともシュウくんから聞いてるでしょう?」
「え……?」
何がどこまで伝わってるんだろう……。
「あぁ、別に、警戒しなくていいわよ。シュウくんだって、誰彼構わず喋ってないみたいだし。貴女のことを知ってるのは、せいぜい一係と私ぐらいじゃない?まー、青柳監視官はどうか知らないけど。」
「あ……。」
私の考えていることぐらい、すぐに分かってしまうみたい。刑事課組織は、勘の鋭い人たちだけで構成されているのか、或いは私が分かり易すぎるのか、分からない。っていうか、一係には、ある程度私のことが伝わってる?あ、でも、それはそうか。狡噛さんに迷惑を掛けたことが何度もあるし、宜野座監視官とも、仕事中に何度かお話している。
「悠里ちゃん?あんまり思い悩んじゃ駄目よ。」
私が逡巡していると、先生が声を掛けてくれた。やっぱり、私が分かり易すぎるのだと思う。
「お姉さんでよければ、いつでも何でも相談に乗るから。どんな方面のテクニックだって、責め方だって、実践形式で教えちゃう。」
「え!?」
どこ方面!?何のテクニック!?何の責め方!?何の実践!?
「…………、冗談よ。」
今の間は何!?
「えっと……。」
「で?やっぱり貴女、シュウくんと付き合ってるのね?シュウくんも隅に置けないじゃない。貴女みたいな可愛い女の子、彼女にするなんて。」
よく分からないけど、先生、嬉しそう……。
「可愛い……か、どうかは分からないですけど、付き合っては……、いないです。きっと私、彼女なんかじゃありません。」
「え?何で?」
先生は、不思議そうに私を見つめている。そう言えば、秀星くんと恋人同士なんて、考えたこともなかった。秀星くんも、「恋人」だの「彼女」だのとかいった単語は、私の前で口に出したことがない。私も、秀星くんを「彼氏」と呼んだこともない。ただ単に、私が先走って秀星くんに「好き」って伝えて、秀星くんも私に、返事をしてくれただけ。それでも、秀星くんは私に何回も「料理」を作ってくれて、楽しい話をたくさんしてくれて、……私を気持ちよくしてくれた。私は、秀星くんに、何ひとつしてあげられてないけど。