第18章 誕生日
「ぶっっっ!!!!」
思いっきり吹いてしまった。「シュウくん」っていうのは、秀星くんのコトだよね!?まさか、このタイミングで、秀星くんの話題が出るなんて、思いもしなかったから、盛大に吹いてしまった。こんな不意打ちって……。っていうか、この流れでのこの話題?唐突過ぎる。
「あ~ら。可愛い反応じゃない?ねぇ、お姉さんにもっと聞かせて?」
唐之杜分析官は、椅子から立ち上がって、未だに扉付近で棒立ちになっている私に近づいてきた。椅子に座っているときでは分かりにくかったけど、胸元が大きく開いたワインレッドのツーピースに白衣、足元は同色のハイヒールが艶やかな出で立ちに、真紅のルージュ。同性の私ですら、ドキッとした。胸も大きくて、腰のくびれも、すらりと伸びた足だって、とてつもなく扇情的。そんな人が私に近づいてくる。
「あ……」
唐之杜分析官は、私の頭に右手を乗せて、目の高さを合わせてくれた。
「ふふ。初心(ウブ)な反応ね。こっちに来なさい。もう、悠里ちゃんの仕事は終わってるんだから、あとは適当にゆっくりしましょう?私もこれから休憩。ホラ、そこに座って?」
微かに私にかかる吐息が、鼻腔をくすぐる。近くで見ても、素敵な女性だった。
「あ……」
私は、促されるがままに、ソファーに座った。座ってすぐに、温かい紅茶を出してくれた。唐之杜分析官は、分析官用の椅子に腰かけて、椅子ごとこちらを向いている。だから、唐之杜分析官と私は、向かい合っている状態。
「あの……、ありがとうございます、唐之杜分析官。」
「いいのよ。ところで、唐之杜分析官だなんて、長ったらしい呼び方、要らないわよ。面倒でしょう?」
そう言えば、秀星くんは、唐之杜分析官のことを話すときに、「センセー」なんて呼んでたっけ。医師免許も持ってるって言ってたのも、思い出した。