第18章 誕生日
……仕事中に、余計なことを考えてちゃダメ。今は、分析室に行かないと。あ、でも、分析室に入るのは、いつも山田さんだったし、私は挨拶の時に入ったぐらいで、正直備品のチェックなんて、私に務まるのかどうか……。不安だ。不安だけど、行くしかない。いつまでも山田さんに甘えていちゃいけない。
「失礼します、管財課の月島です。備品のチェックに参りました。」
自動扉が開くと同時に、挨拶をする。
「は~い、いらっしゃ~い。待ってたわよ。悠里ちゃん。」
あれ!?もしかして、時間過ぎてる!?
「すみません、お待たせして!」
「違うわよ。予定より早いわよ?そうじゃなくて、私が貴女に会いたかった、って意味。」
気怠そうに、それでいて妖艶な雰囲気を漂わせて、分析官―――――唐之杜分析官は椅子に座ったまま振り返った。薄暗くてよく見えないけど、唐之杜分析官は笑っていた。それに、なんで、私の下の名前を――――?
「ふふ、びっくりした?まぁ、適当に座って。ん~、何か飲む?コーヒー?紅茶?」
唐之杜分析官は、扉の近くで棒立ち状態の私に、まるで友だちに接するように話しかけてきた。
「えっと……、仕事を……」
「あー、そんなの、もう終わってるわよ。今転送するから、ハイ。」
「え?」
管財課のデバイスの電源を入れると、完成された報告書がファイルになって届いた。内容をざっと確認する。寸分の狂いもない、完璧な仕事だった。
「す、すみません!私の仕事なのに……!」
多分、厚意でやってくれたのだろう。それでも、今は山田さんや私の仕事なのに、申し訳ないと思った。
「いいのよ、こんなの。やっつけ仕事なんだから、適当にやれば。そもそも、こんな書類、上だって一々見てないわよ。誰がやったって一緒じゃない。」
唐之杜分析官は、サラリと言った。カッコいいけど、それじゃあ私は、いつまでも仕事を覚えられないような……。
「唐之杜分析官だってご多忙なんですから……。次からは、私にやらせてください。」
「ん~?まぁ、貴女がそこまで言うなら、別にどっちでもいいけど~。そんなことよりも、貴女、シュウくんとどこまでイったの?」