第17章 官能クライシス Ⅲ
悠里ちゃんは今のところ、俺のことを惜しみなく「好き」と言ってくれている。それは俺にとって、とても喜ばしいことで、幸運なことだ。でも、悠里ちゃんの未来を想えば、決して手放しでは喜べない。
本当を言えば、今だってそうだ。俺と一緒にいなければ、悠里ちゃんはもっと楽しいことをするなり、スキルアップなりに時間を費やせたはずだ。俺はああやって、悠里ちゃんの時間を浪費させている。こんな、窓ひとつない、不健康な牢獄に、一緒になって収容される理由なんて、全く以って皆無だ。なんだって、俺みたいなゴミクズに触られても、俺の名前なんて呼び続けるのか。
ふと、俺は自分の手に吐き出した液体を見た。
「ハ―――――ハハッ……」
シビュラによりコーディネイトされるようになった男女の出会いに、性欲。
もし、この手にある液体が、悠里ちゃんの躰の中に入ったら、悠里ちゃんはどんな反応をするのだろうか。焦って泣き叫ぶだろうか、それとも案外冷静に医療的処置を受けるのだろうか。どちらにしても、俺は頭の中に、幸せそうな悠里ちゃんを思い描くことができない……って、なんで俺は悠里ちゃんと最後までヤるみたいな想像してんだか。まるで、ケダモノじゃねぇか―――――って、俺は既に『ケダモノ』だったか。――――――そうだよ。本当ならあの時だって、もう既に濡れてグショグショになってた悠里ちゃんのパンツを引きずりおろして、もっとめちゃくちゃにして、俺の名前なんて呼べないぐらいに、なかせるのも悪くないな、なんて思ってた。出来るなら、俺だって悠里ちゃんにたっぷりご奉仕してもらって、快楽の波にのまれてみたい。悠里ちゃんに溺れたい。もし、俺が悠里ちゃんに頼めば、悠里ちゃんは恥ずかしがりながらも、俺の要求に応えてくれるだろうか。悠里ちゃん、経験少なそう……というよりは、恐らくはほぼ初めてだろう。羞恥に塗れながら、震える指先で、それも涙を浮かべながら俺を触ってくれる悠里ちゃんってのも、なかなかにソソる。