第17章 官能クライシス Ⅲ
「……、っは、ン――――――!」
悠里ちゃんが帰って、いつも通りの、ヒトリの空間に戻ったこの部屋。シャワーの音が、やけに五月蝿い。
「―――――ハ、っく……」
悠里ちゃんの感触が、頭から離れない。別に、思い出そうともしてないのに、勝手に頭の中を渦巻いては、それに合わせるようにして下半身に熱が集まってくる。悠里ちゃんの蕩けたような顔に、甘い声、躰。前に夢でみたのとは全然違った。一言でいえば、悠里ちゃんが可愛くて、どうしようもなく欲情した。
「―――――――ッ!……ハァ……、ハァ……」
俺のモノは堪え切れなくなって、俺の手の中で射精した。
「悠里、ちゃん……。」
何やってんだ、俺は。
悠里ちゃんに、手を出しかけた。いや、気持ちの中では、もう出してしまった感覚。大丈夫、まだイれてはない。でも、もう、戻れそうにもない。
――――ヤバい。鼻の奥がツーンとしてきた。ハハ、情けねェな、俺。
悠里ちゃんはクリアカラーの『健康な市民』で、俺は『執行官』で。
悠里ちゃんは、キチンと職業適性も出て、きっと今に結婚適性なんかも出てイイ男と結婚できて、幸せな家庭を築いたりなんかするのだと思う。悠里ちゃんの性格だ。きっと、ソイツにも大事にされて、毎日笑って楽しく暮らすのだと思う。そんな未来、シビュラでなくても、容易に想像できる。その男がどんな奴なのかは分からないし、想像なんてしたくもないけど。
一方の俺はといえば、『執行官』だ。それだってただの『潜在犯』じゃない。シビュラの犬。明日にだって、どうなるか分からない身だ。征陸のとっつぁんみたいに、運良く長いこと生き延びれたとしても、それでも『執行官』だ。『執行官』を辞めるか、使い物にならなくなれば、『隔離施設』行きだ。逃亡なんてハナから論外。シビュラに殺される。もっと言えば、犯罪係数がぶっち切れば、『処分』しか待ってない。どう転んだって、どう足掻いたって、『執行官』に幸福な結末は待ってない。