第16章 官能クライシス Ⅱ
「んじゃ、最後ね。」
――――チュ
秀星くんは、一旦私の胸から唇を離したかと思うと、反対側の胸にキスを降らせた。
「……ん……?」
―――――――チュゥ……
「きゃ――――――――あぁあぁぁ―――――――――!!?」
秀星くんは、そのまま私の敏感なところを吸い上げた。その刺激に、半ば反射的に太腿を擦り合わせた。ぬるり――――その瞬間、私の秘所が、どうしようもないくらいに濡れていることに気付いてしまった。一気に恥ずかしくなって、唇を噛んだ。でも、その恥ずかしさと一緒に、快感の波が押し寄せてきて、もうおかしくなりそう。
「しゅ、せ、くん……。」
私の唇は、勝手に秀星くんの名前を呼んでいた。
「―――――ん」
秀星くんは、返事をしながらも、まだ私の胸に吸い付いている。もう、限界。私の中から、とろりとしたものが、外に出ていくのが分かった。私、秀星くんが欲しいんだ。秀星くんの言う通り、私はえっちだ。
ちゅぱ、と音を立てて、秀星くんは唇を離した。
はぁ、はぁ。私の呼吸は荒くなっていた。秀星くんも、少し呼吸が荒かった。
「ごめん、ちょっと、やりすぎた。悠里ちゃん、大丈夫?」
秀星くんの声に、僅かに後悔の色が滲んでいた。
「はぁ……、ん、だ、だいじょ、ぶ……。」
それよりも、躰が熱い。躰の芯に火がついて、それが燻(くすぶ)っているような感覚。
「もう、やらないから……」
秀星くんはそう言って、私の服を軽く直した。そして、私をそっと抱き寄せた。まるで壊れ物でも扱うかのように、優しく。そして、部屋の明かりを完全に消した。部屋の明かりが消えてすぐに、頬と唇に、柔らかいものが触れた。きっと、秀星くんがキスしてくれたんだろうな。
「ん……」
秀星くんの体温が、心地良い。回された腕が、安心する。何の匂いかはわからなかいけど、優しい匂い。私の荒い呼吸なんてすぐに落ち着いて、鼓動だってゆっくりになるから、とっても不思議。そのうち、静寂に包まれて、秀星くんの呼吸音まで聞こえるようになった。
―――――あぁ、そっか。別に、何を話さなくても、こうやって、秀星くんを感じていられることが、私にとって、幸せなんだ。
秀星くん。秀星くんの名前を呼ぼうと思ったけど、この幸せな静けさを自分から破るのは気が引けて、そのまま。