第15章 官能クライシス Ⅰ
「―――――――っ!」
なんでそういうこと言うの!でも、単純な私の脳は、あの甘さを思い出している。甘いかどうかも分からなかったメープルシロップだったはずなのに、ひたすらに甘い記憶。――――――あぁ、そうか。メープルシロップじゃなくて、秀星くんが甘かったんだ。
―――――――チュ
瞼の上に、秀星くんの唇が降りてきた。さっきもそうだけど、わざとリップ音を立ててるよね?これ。でも、秀星くんに「好き」って言われてるみたいで、気持ちいい。
「瞼も、何か意味があるの?」
「気になる?」
「うん。」
「内緒。」
薄暗い中で、目を細めて少年のように笑う秀星くんは、不思議と輝いて見えた。
「な、なにそれ……んっ……!」
唇を塞がれた。同時に、秀星くんの片手が、私の後頭部にあてられた。
「ん……、んんっ……!?」
もう片方の手が、私の背中の辺りにまわされて、その手がくすぐったい。そんなことを考えている間に、キスが深くなってきた。最初は、唇を合わせるだけだったのに、角度を変えて、私の唇を挟んできた。
「……んんっ!」
口を離して抗議しようにも、秀星くんの手でホールドされていて、動くに動けない。
「――――――んっ!!?」
そのうちに、ぬるっとしたものが、私の口内に侵入してきた。―――――舌?でも、なんか、気持ちいいかも……。でも、息が苦しくなってきた。
「ん……、っん……!」
苦しい。涙が出そう。そう思ったところで、やっと秀星くんが唇を離してくれた。
「―――――っぷは、はぁ……はぁ……。」
頭がぼーっとする。口の端から、涎が垂れてきたのを感じて、慌てて手の甲で拭った。そうしたら、秀星くんが、私の手を取って、ぺろりと舐め上げた。
「ちょっ……!?」
「気持ちよかった?」
秀星くんは、余裕の顔。
「え……?」
「だから、キス。気持ちよかった?」
「……、……。」