第15章 官能クライシス Ⅰ
気持ちよかったなんて、言えるわけない。いや、確かに気持ちよかったけど。でも、きっとキスそのものが気持ちいいんじゃなくて、秀星くんにされたから、秀星くんが相手だから、気持ちいいんだ。
「………、えっ……と……。」
でも、こんなことを言ってしまって、いいのかどうか。引かれたりしないだろうか。
「……悠里ちゃん?」
秀星くんが、若干心配そうな声で、私の名前を呼んできた。……よし。どう思われるかは分からないけど、口に出してみよう。
「……、えっと、たぶん、秀星くんに、してもらったから、……きもち、よかった、と、思う……。」
言った。言ってしまった。でも、秀星くんからの反応は無い。もしかして、引いてる……?
「秀星、くん……―――――ひゃあっ!?」
私の視界は勢いよく反転して、部屋の天井をバックにして、秀星くんが見えた。もしかしなくても、私は秀星くんに押し倒されてる。
「あ……?」
「悠里ちゃんは、俺のこと誘ってんの……?」
「誘っ……て……?」
「俺が悠里ちゃんのこと好きなの知ってて、まだそういうこと言うってコトは、悠里ちゃんは俺のこと誘ってる?……悪い子だ。」
私に覆いかぶさりながら、私を「悪い子」と揶揄した秀星くんは、薄暗がりの中でどうしようもないぐらいに色っぽく見えた。
「さて、悪い子にはお仕置きが必要、かな?」
秀星くんは、私の耳元で、吐息をたっぷりと孕ませながら囁いた。