第15章 官能クライシス Ⅰ
「さすがに全部は覚えてないけど。今やった、「手の甲」なら「敬愛」って意味になるんだって。他にも……」
私の親指の指先に、秀星くんが唇を触れさせた。そのまま、人差し指、中指、薬指と順に唇で触れ、小指から唇を離す直前に、チュ、と軽いリップ音を立てた。
「ぁ……」
秀星くんの仕草が、ひどく官能的に見えて、ドキドキして仕方がない。それに、離れていく秀星くんの唇が名残惜しい。
「「指先」だと「賞賛」。あとは……」
秀星くんは、私の右手をもう一度引き寄せた。そしてそのまま、私の手首と手の平に、それぞれ触れるだけのキスを降らせた。
「んっ……」
そっと触れるだけの感覚がくすぐったくて、心地良い。
「「手の平」だと、「懇願」って意味になるんだって。「手首」は「欲求」……だった気がする。」
「懇願、欲求……?」
「うん。懇願と欲求。……ね、悠里ちゃんも、俺にキスしてよ。場所はどこでもいいからさ。」
そう言って、秀星くんは不敵に笑った。どこにキスしたらいいのかなんて分からないけど、私の手を握ってくれた秀星くんの手が嬉しかったから、私も秀星くんの手を引いた。手は離さないままに、服の上からでもお構いなく、秀星くんの腕にキスを落とした。
「「恋慕」……?」
「え……?」
「確か、「腕」へのキスは、「恋慕」だったと思う。悠里ちゃんってば、やっぱり俺に恋してるんだ?」
そう言って、秀星くんは満足そうに笑った。
「意味なんて知らなかったけど、うん……。」
改めて言われると、恥ずかしい。秀星くんから手を離して、なんとなく下を向いた。
「んじゃ、俺からもお返し。悠里ちゃん、こっち向いて?」
恐る恐る、秀星くんを見上げる。秀星くんと目が合って、もっと恥ずかしくなった。
「そんな顔しなくても、初めてじゃないじゃん?」