第15章 官能クライシス Ⅰ
***
「お、おじゃまします……」
秀星くんのベッドに腰掛ける。別に何もしないけど、なんだかドキドキする。秀星くんも、私の横に腰掛けてきた。秀星くんの重みで、ベッドが軽く沈んだ感覚が、生々しく感じた。私は、無言で、秀星くんの頭に右手を伸ばした。秀星くんが驚いている様子はない。
秀星くんの髪は、私が思うよりもサラサラとしていて、綺麗だった。でも、やっぱり男の人の髪。私の髪と比べれば、やっぱり硬くて。ああ、でも、そんなことより、今、こうやって秀星くんに触れられることが、嬉しい。私はそのまま、秀星くんの頭を撫で続けた。
「何やってンの?」
秀星くんが、少し怪訝そうな目で、私を見たけど、気にしない。
「ううん。ただ、こうやって、秀星くんと一緒にいられるのが、嬉しい。」
思ったことをそのままに。本当は凄く恥ずかしいけど、止めたくない。
秀星くんは、私に頭を撫でられても特に抵抗することなく、時々目を細めている。イヤではない、筈。
「ね、悠里ちゃんもこうやって俺をイイようにしてるってコトは、俺もしていいってコト?」
ややあってから、秀星くんが口を開いた。いつもの悪戯な瞳が、キラリと光ったような気がした。
「えーっと……、内容によるけど……」
秀星くんは私の右手を取って、手に数度頬ずりをした後、私の手の甲に軽く口付けた。
「んっ……!?」
右手に感じたキスの感触が甘くて、思わず妙な声を上げてしまった。
「そういや悠里ちゃん、知ってる?キスってさ、場所によって意味があるらしいよ。」
「意味?」
そんなのあるんだ……。初耳。
「うん。昔に書かれた本の、電子書籍版に書いてあった。なんか……22パターンあった気がする。」
「22もあるの!?すごい……」
誰がどう分類して執筆したのかは分からないし、真偽のほども定かではない。それでも、言葉以外で、愛情を親しい人に伝えられるのは、とても素敵なことだと思えた。