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シャングリラ  【サイコパスR18】

第14章 『執行官』 Ⅰ




 つまり、『シビュラ』の運営する『社会』の中で駒として使用できない『潜在犯』なら、そのまま税金を投入し続けて社会的なランニングコストを掛け続けるのは無駄が多い。それよりは、例えば『執行官』として社会的に使用するほうが、効率的、そういうこと。しかし、このあまりにも非人間的なシステムの仕組みだって、知らぬが花だ。なぜなら、『社会』システムを知ったところで、基本的に個人ではどうすることもできない。どうすることもできないばかりか、『シビュラシステム』――――――いや、『シビュラシステム』が維持する『シビュラ社会』に対して懐疑的になり、この『社会』に背くような考えを持つようになる。そうなれば、恐らくその人間の『色相』は濁ることになる。『シビュラ』が『社会』を運営する役目と、『市民』を裁く役目を、両方握っているのだから、その可能性は極めて高い。『色相』の濁りが『シビュラ』に露見すれば、そこからは早い。心理傾向を詳しく検査された挙げ句に、『社会』の脅威となりうる思想の持主としてこの『社会』から隔離される。なるほど、狡噛さんの発言は、言い得て妙、という他はない。余計なことについては全く「知らない」、もしくは何かに気付いていても、「知らないフリ」をしていることが、この『社会』で暮らしていくための条件、というわけか。



「ありがとうございます、狡噛さん。」
 『シビュラシステム』に、腹が立たないわけじゃない。むしろ、腹が立つ。秀星くんを思えば、尚更。
「『シビュラ社会』って、どういうものなのか、まだまだ全然分かりませんけど、教えていただいて、今までとは違った考えを持つことができました。」
「そうか。この『社会』で自分の考えを持つなんて、また随分と時代錯誤だな。もう流行らないぜ、そういうの。」
 そう言う狡噛さんの口元は、笑っていた。
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