第14章 『執行官』 Ⅰ
「『更生施設』は、『犯罪係数』が上昇したものの、更生の余地が残されている人間が隔離される施設だ。中では、ストレスセラピーにカウンセリング、あとはストレスケア薬剤治療などが実施される。とにかく、徹底した管理と監視の下、更生プログラムが実行されていく。だが、さっきも言った通り、『更生施設』で更生されて、『更生施設』を出所して社会復帰を果たす人間は、決して多くない。むしろ、ほぼいないと言った方がいい。―――――『潜在犯』でも就ける職に就かない限りはな。」
『更生施設』なのに、更生できないって、そんなの笑い話にもならない。人を馬鹿にするにもほどがある。しかも、施設から出たいと思って『執行官』になったとしても、その末路は――――――。
でも、これで、さほど出来のよろしくない私の頭でも、分かってしまった。さっきの狡噛さんの発言の意味が。
―――――「この『社会』は、そこに暮らす全ての人間の幸福を実現するための『社会』じゃない。「最大多数の最大幸福」を前提として、「最小リソースによる最大効率の成果」を追求し続けている『社会』だ。俺たち『執行官』は――――いや、この『社会』を構成する駒である『市民』は、知らないでいた方がいいことが山ほどある。」