第14章 『執行官』 Ⅰ
「ねぇ、狡噛さん……。『執行官』って、ずっと『執行官』、なの……?」
私、うまく声が出てない。
「『監視官』から、役立たずと判定されれば、隔離施設行きだよ。あとは……。」
まだ何かあるの?
「本当に罪を犯すことで『犯罪者』になるケースもあれば、現場で殉職するケースもある。あと、逃亡を図った場合は、『シビュラ』から処罰が下される。」
「処罰って……?」
「確実に命は無い。」
「―――――――――」
施設のこともよく知らないけど、隔離施設に送られるだけでも充分だと思うのに、現場で死ぬか、逃げたら殺されるの?そんな、そんなのって、あまりにもあんまり過ぎる。
「―――――――っく、うっ――――」
もう、泣くのを堪え切れなくなった。泣いたって、何も変わらないのに、馬鹿だな、私。いちばん苦しいのは、私じゃないのに。これじゃあ私、悲劇のヒロイン気取り。
「―――――アンタも、もう気が済んだだろ。落ち着いたらそこまで送る。」
私は、黙って首を振った。
「お願いします、狡噛さん、もうちょっと、教えてください。このままだったら、私、ただの悲劇のヒロイン気取りです。」
出てくる涙を、手で思いっ切り拭って、もう一度狡噛さんを見る。私も大概強情だと思われているかもしれないけど、気にしてなんていられない。
「『施設』って……?『施設』について、もう少し教えてください。」
「分かったよ。―――――『隔離施設』と『更生施設』が一般的だな。一般的には、さほど区別されて呼び分けられている印象は無いが、異なるものだ。」
「えっと……?」
さっき言った、『監視官』に役立たずだと判断された『執行官』が送り込まれる施設が『隔離施設』、縢が『執行官』になるまで過ごしていたのが、『更生施設』。」
「ん……?」
「施設によって、多少の差はあるかもしれないが、概(おおむ)ね変わらない。『隔離施設』は、『犯罪係数』が300以上の重篤患者が隔離される施設だ。更生の意志が無い者も、『隔離施設』行きだな。有事の際には、中の『潜在犯』は、「処分」される。」
もう、訊き返す必要もない。「処分」とは、そういうことだ。