第3章 瞳をあけたままで~斎藤一編~
翌朝、迎えに来た左之と不知火の前に時尾を連れて行く。
護衛と称して、総司と平助も一緒に来て居た。
「宜しく頼む。」
そう言って不知火に時尾を引き渡すと、不知火は慈しむような目で時尾を見つめた。
「お前が時尾か…。兄貴の事は本当に悪かったな。」
時尾はゆっくりと首を横に振った。
「彼奴等の遣り口には俺も辟易してるんだ。
高杉が……
あいつが生きていればこんな事にはならなかった筈なんだが………」
不知火は悔しそうに唇を噛んでから続ける。
「とにかくお前の事を引き受けたからには
絶対に安全な場所まで逃がしてやるからな。
心配すんなぁ。」
「時尾…不知火は荒っぽいが悪い奴じゃねえ。
信用して任せても大丈夫だからな。」
左之が時尾を安心させるように言うと
「おいおい、原田……荒っぽいは余計だろ。」
不知火が笑いながら左之を睨み付けた。
「時尾……俺のせいで怖い思いさせちまってごめんな。」
平助と総司が時尾に近付く。
「いいえ。藤堂さんと市中を回れたのはとても楽しかったです。
いつも優しくして下さってありがとうございました。」
時尾が柔らかく微笑む。
「時尾ちゃん、元気でね。
出来れば僕の事も忘れないで。」
時尾の肩にそっと触れた総司の手に、時尾も手を重ねた。
「勿論、絶対に忘れません。
沖田さんもお元気で……。」