第3章 瞳をあけたままで~斎藤一編~
「俺もあんたと離れたくは無い。ずっと側に居て欲しい。
ただ俺は…武士としての生き様を変えられん。
これ迄、敵も味方も数え切れん程斬り殺して来た。
ならば俺もいつか戦いの中で死ぬのだろう。
……それが因果と言うものだ。
そんな俺の側にあんたを置いてはおけない。
………分かって欲しい。」
「分かっています。でもっ………死ぬなんて言わないで。
死なないで……一さん。」
声を震わせて縋り付く時尾の頬を撫でながら、俺は精一杯の想いを告げる。
「全て終わったら……
俺とあんたの間を隔てるものが全て無くなったら……
必ず迎えに行く。
……待っていてくれるだろうか?」
「………一さん。」
時尾の瞳からぽろぽろと涙が零れた。
「時代の移り変わりと共に変わる物も有れば、変わらない物も有る。
人の思想も、世の中の流れも……
だが俺は…その変わらない物こそ信じている。
そして俺の想いは変わらない………絶対に。」
「私も……変わらない物を信じます。
私の想いも変わりません。
ずっと……待っています。」
時尾の顎に手を掛け上向かせてからそっと口付ける。
「ありがとう……時尾。
あんたに出会えた俺は、この上無い果報者だ。」
そう言って俺はゆっくりとまた時尾に覆い被さった。