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薄桜鬼~いと小さき君の為に~

第1章 情けない狼~土方歳三編~


「い…いや……」

「何抵抗してんだよ?俺に抱かれたいんだろう?」

襦袢の隙間に手を差し込んで内腿を撫でると

「嫌だっ……離してっ!」

葛葉は四肢をばたつかせて俺の下から逃れようと藻掻く。

「おい…どうした?」

「嫌だ嫌だぁ……ううっ……く…」

「ちょっと待てよ……。
 嫌がる女を無理矢理手篭めにする趣味は無いぜ。」

俺が葛葉の上から退くと、葛葉はまるで赤ん坊のように身体を丸めて大声で泣きじゃくった。

「全く……何なんだ。」

泣いてる女程、面倒臭えもんはねえ。

俺は葛葉が泣き止むまで、じっと待ち続けた。

まだひくひくとしゃくり上げてはいたが、一頻り泣いて気が済んだのか葛葉がおずおずと俺を見上げる。

「少しは落ち着いたか?」

溜め息を吐いて問い掛けると

「ごめ…んっ…なさ……」

葛葉は涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔を隠しもしないで謝罪した。

「年頃の娘がそんな顔を男に見せるんじゃねえよ。」

俺は呆れたように笑って懐紙で葛葉の顔をぐいぐいと拭いてやる。

幼子のように俺にされるがままになっている葛葉の背中を優しく擦ってやってから

「今夜はもう寝ろ。」

と布団を掛けた。

「………怒ってないんですか?」

「怒っちゃいねえよ。
 いくら仕事だからって言っても、
 いきなり碌に知りもしない男に
 抱かれるなんて怖いに決まってるよなあ…。
 それでも一度は覚悟を決めたお前は…偉いよ。」

そう言って頬を撫ででやると、葛葉は安堵したように微笑む。

「俺は帰るから、お前は朝までゆっくり寝てな。
 見世には話を付けておくから心配しなくていい。」

立ち上がりかけた俺の袴の裾を掴んだ葛葉がまた泣き出しそうな顔をして見上げてきた。

「どうした?」

「……一人にしないで。」
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