第2章 輝く意味~原田左之助編~
驚いて息を飲む俺から目を反らさず操は続けた。
「明日の朝までに必ず帰って来ると約束出来るなら
原田さんに会いに行っても構わないと……
父は言ってくれました。」
これは本当の話だろうと俺は思った。
操がこんなに上手く嘘を吐けるとは思えないし、娘の自由を奪わなくてはならない事にあれ程苦しんでいたあの男ならこれくらいの覚悟を持っていても可笑しくねえ。
「だからって………」
言い掛けた俺の胸に突然操が飛び込んで来る。
「おい…」
「………抱いて下さい。
最初で最後に………一度だけ……」
そのまま押し倒してしまいたい衝動を必死に抑えて、俺は出来る限り悪びれた様子を醸し出して言った。
「お前、この前見ただろう?
俺は誰とでもああいう事するんだぜ。
そんな男に………」
操は何もかもお見通しだと言うような笑顔で俺を見上げる。
「誰とでもするのなら……私ともして下さい。」
………もう俺は耐えられなかった。
今、胸の中に居る操を引き離すなんて出来る訳が無かった。
「……本気なんだな?」
「はい。」
操の身体を力一杯抱き締める。
操に触れている手が小刻みに震えている事に気付いた俺は苦笑しながら
「笑っちまうだろ?
この俺が、お前に触れるのが怖くて震えてるなんてよ…。」
耳元で囁いて、震える手を前に差し出すとその手を操の両手がそっと包み込んだ。
「怖がらないで下さい。私は怖くありませんから……」
「操……ずっとお前にこうしたかった。」
そっと口付ける。何度も、何度も……。
その間に操の背中に手を回して帯を解きに掛かる。
女の帯を解く時はいつも其れなりに緊張するが、今回は特に覚束無い手付きになってしまった。
それでも何とか解き終え、着物を脱がして襦袢姿になった操をそっと押し倒し、両手首を掴んで畳に縫い付けた。
「止めるなら今の内だ。
これ以上進んだら…もう逃がしちゃやれねえぞ。」
操は潤んだ瞳で俺を見上げて
「逃げません。」
と微笑んだ。