• テキストサイズ

薄桜鬼~いと小さき君の為に~

第2章 輝く意味~原田左之助編~


それから半刻もしないうちに俺が居る部屋の襖が開いた。

「え…………原田…さん?」

振り向くと操が呆然とした様子で立って居る。

その操が見つめているのは、俺の腕の中に居る君菊だ。

半裸に近い状態にまで着物を開けさせ、両腕を俺の首に巻き付けている君菊は不審そうな目を操に向けて「どちらさん?」と問い掛けた。

「私……父に呼ばれて………」

絞り出すような声で言う操に、

「お前の親父さんなら向かいの部屋だと思うぜ。」

俺は君菊の胸元に顔を埋めたまま言ってやる。

それでも尚、操は動かない。

「……見ての通り最中なんでな。
 悪いが出て行ってくれないか。」

操の方を振り返りそう言う俺の腰に、君菊の長い脚が絡まる。

途端に操の目にはじわりと涙が浮かび上がり

「原田さん…………私……」

何かを言い出すのを遮るように俺は畳み掛けた。

「それとも……其処で見てるか?
 それも興奮して良いかもしれねえ。
 なあ…君菊………」

君菊に激しく口付けると、俺の背後で襖が閉じられた音がした。

操の足音が遠退くのを確認して、俺は君菊の身体を手放す。

「もう、宜しいんですか?」

そう言って君菊は乱れた着物を整え始めた。

「ああ…変な事をさせちまって悪かったな。」

「いいえ。原田さんからの頼み事ですもの。
 こんなのは大した事ありません。
 でも……あんな可愛らしいお嬢さんを泣かせてしまって
 本当に良かったんですか?」

「………いいんだ。」

それしか言えない俺の頬に君菊はそっと手を添える。

「本当に原田さんは優し過ぎて……困ったお人ですね。」

慰めるように微笑む君菊を見て、俺はほんの少しだけ救われたような気がした。
/ 174ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp