第2章 輝く意味~原田左之助編~
それから半刻もしないうちに俺が居る部屋の襖が開いた。
「え…………原田…さん?」
振り向くと操が呆然とした様子で立って居る。
その操が見つめているのは、俺の腕の中に居る君菊だ。
半裸に近い状態にまで着物を開けさせ、両腕を俺の首に巻き付けている君菊は不審そうな目を操に向けて「どちらさん?」と問い掛けた。
「私……父に呼ばれて………」
絞り出すような声で言う操に、
「お前の親父さんなら向かいの部屋だと思うぜ。」
俺は君菊の胸元に顔を埋めたまま言ってやる。
それでも尚、操は動かない。
「……見ての通り最中なんでな。
悪いが出て行ってくれないか。」
操の方を振り返りそう言う俺の腰に、君菊の長い脚が絡まる。
途端に操の目にはじわりと涙が浮かび上がり
「原田さん…………私……」
何かを言い出すのを遮るように俺は畳み掛けた。
「それとも……其処で見てるか?
それも興奮して良いかもしれねえ。
なあ…君菊………」
君菊に激しく口付けると、俺の背後で襖が閉じられた音がした。
操の足音が遠退くのを確認して、俺は君菊の身体を手放す。
「もう、宜しいんですか?」
そう言って君菊は乱れた着物を整え始めた。
「ああ…変な事をさせちまって悪かったな。」
「いいえ。原田さんからの頼み事ですもの。
こんなのは大した事ありません。
でも……あんな可愛らしいお嬢さんを泣かせてしまって
本当に良かったんですか?」
「………いいんだ。」
それしか言えない俺の頬に君菊はそっと手を添える。
「本当に原田さんは優し過ぎて……困ったお人ですね。」
慰めるように微笑む君菊を見て、俺はほんの少しだけ救われたような気がした。