第2章 輝く意味~原田左之助編~
「ありがとな。そう言って貰えるだけで嬉しいよ。」
俺が微笑むと操は弾かれたように顔を上げて、真剣な目で俺を見つめて言った。
「あの時、怪我をされた皆さんは大丈夫でしたか?」
正直俺は驚いた。
俺だけで無く、他の隊士の事にまできっちりと気を回せるなんて……こいつは本当に真っ直ぐ育てられて来たんだと改めて思い知らされる。
本当の事を言うと、池田屋の現場で即死した隊士もいた。
屯所に戻ってから死んじまった奴もいるし、平助や総司だってまだ本調子じゃねえ。
でもこんな目をして真っ直ぐに俺を見上げる操にそんな話は出来る訳がなかった。
「ああ…皆大丈夫だ。心配してくれてありがとな。」
「……良かった。」
安堵したように大きな溜め息を吐いてから、やっと操は笑ってくれた。
「じゃあ、今日は祭を案内してくれるのか?」
俺がにやりと笑って言うと
「勿論です。約束したじゃないですか。」
と、操もにっこりと笑い返す。
そこからは二人で出店をひやかしたりしながら祭を楽しんだ。
今日の操は上品な浴衣姿で、いつもは下ろしている長い髪も丁寧に結い上げられている。
そのせいで露になった項が堪らなく色っぽくて、俺は目のやり場に困る程だった。
「なあ……操。」
「はい。」
「今日は……随分と綺麗だな。」
操の耳元に顔を寄せて囁くようにそう言うと、途端に操の顔が紅く染まって
「あ……ありがとうございます。」
と俯いたせいでその白い項が益々強調される。
自分で言い出した癖に何だか俺も照れ臭くなっちまって、暫く二人共無言で歩き続けた。
だがその時間は決して気まずいものでは無く、心地良い空気を纏っていた。