第2章 輝く意味~原田左之助編~
操と約束した日が数日後に迫ったある夜、俺達新選組は池田屋を襲撃した。
御所に火を放って天子様を拐うなんて大それた事を計画していた奴等を捕縛する為だ。
俺は裏口の守備に就いていたから中の様子は分からなかったが、それでも額を割られた平助や血を吐いて昏倒した総司が運び出されて来た時には流石に青ざめた。
結果、新選組は其れなりの戦果を上げ、市中に名を轟かせる事になる。
長州や薩摩藩士の報復を避ける為、明るくなるまで池田屋に留まって居た俺達は朝になって漸く凱旋を開始した。
沿道には大勢の野次馬が溢れ返り、好奇や畏怖の念を含んだ視線が突き刺さる。
その野次馬の中に操の姿を見付けた俺は当たり前のように近付こうとしたが、操は真っ青な顔をしてかたかたと震えていた。
ふと自分の有り様を省みれば……俺は血塗れだった。
自分自身は大した怪我もしていなかったが、返り血や傷付いた隊士の手当てなんかで、俺の身体中が紅く染まっている。
俺と操は暫く無言で見つめ合っていたが、俺は操に向かって踏み出していた足を引き戻し、また屯所に向かって歩き出した。