第2章 輝く意味~原田左之助編~
それから俺と操の距離は急速に近付いていった。
市中で顔を合わせれば挨拶する程度から始まって、今ではわざわざ待ち合わせて茶店で茶を飲んだりするようになっている。
正直言えば操に対して艶っぽい感情を持たない事も無かったが、それ以上に今は一緒に過ごせる時間が大切だった。
その日も二人で茶を飲みながら話をしていると、何処からか祭囃子が聴こえてきた。
「もうすぐ祇園祭だな。」
「原田さんは祇園祭、見た事ありますか?」
「俺は京に来てまだ何年も経ってねえからな。ちゃんと見た事はねえんだ。
操は京の生まれだから詳しいんだろ?」
そう問うと何故か操は少し寂しそうな顔をした。
「子供の頃はよく両親に連れて行って貰いましたけど、最近は忙しいのか……
だからここ何年かは行ってないんです。」
「じゃあ……今年は一緒に行くか?」
俺の言葉に操は嬉しそうに微笑んだ。
「本当ですか?」
「ああ…案内してくれよ。」
「はい。約束ですよ。」
操が小指を差し出して来る。
「ああ…約束だ。」
その白くて細い小指に俺の無骨な小指を絡ませた。