第1章 情けない狼~土方歳三編~
果てた後、お互いの身体を労るように無言で抱き合う。
俺が葛葉の顔中に口付けを落とすと、擽ったそうにふふ…と笑って身を捩った。
「ねえ………歳さん。
私の最後のお願い…聞いてくれる?」
「……何だ?」
「あのね……私が眠ってる間に帰って欲しいの。」
俺が驚いて葛葉を見つめると、葛葉もその目を真っ直ぐに見返して来た。
「きっとまた……泣いちゃうから。
また歳さんの事、引き留めちゃうから……」
そう言う葛葉の瞳からは既に涙が溢れている。
「もう……泣いてんじゃねえか。」
その涙を指で拭ってやると
「ふふ……ごめんね。」
と、笑って俺の胸に擦り寄って来た。
「ちょっと疲れちゃった。…先に眠ってもいい?」
「ああ……」
「お休みなさい……歳さん。」
「ああ……お休み、葛葉。」
葛葉が寝入ったのを確かめて、俺は布団を脱け出し身仕度をする。
そして、布団の中の葛葉にもう一度そっと口付けてから見世を出た。