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薄桜鬼~いと小さき君の為に~

第5章 僕は風 君は空~沖田総司編~


それから日に日に有希ちゃんの体調が悪くなっていった。

食事も殆ど摂れなくて、食べても直ぐに吐いてしまう。

これが悪阻なんだって理解はしているけど、それでもそんな有希ちゃんの姿を見る度に僕は激しく動揺した。

こんな時、男って本当に無力だと思う。

心配しておろおろして、有希ちゃんの身体を擦ってあげる事しか出来ない。

勿論、有希ちゃんに負担を掛けないようにと出来るだけ家事もやろうとしたけど、それでも有希ちゃんは沖田さんの体調が心配だからとあまり僕に手伝わせてはくれなかった。


その日も有希ちゃんは真っ青な顔をして、吐き気に耐えているようだった。

「有希ちゃん…大丈夫?
 少し横になった方がいいんじゃない?」

僕がそう言って有希ちゃんの背中を擦ると

「大丈夫ですよ。
 病気じゃ無いんですから、あまり心配しないで下さいね。」

有希ちゃんは健気に微笑んだ。

僕の子を産む為にこんなにも辛い思いを耐えている有希ちゃんに、愛おしさが際限無く沸き上がる。

有希ちゃんがお腹の中で僕の子を守ってくれているように、僕も有希ちゃんを何が何でも守り抜きたいと思った。

「やっぱり一度、松本先生に診てもらおうよ。
 少しは楽になるかもしれないしさ……ね?」

「そうですね。
 新選組の皆さんにも報告したいですし、明日にでも伺ってみます。」

「うん。それがいいよ。」

微笑みながらも辛そうに息を吐いた有希ちゃんの小さな身体を僕はずっと擦り続けた。
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